脳血管疾患の死亡率

脳血管疾患は1950~1980年までは死因1位でしたが、1985年頃よりは悪性新生物、心疾患についで死因順位は3位となっています。

sba_007_1_s図 1. 主要疾患別死亡率の推移(昭和5年~平成8年)

脳血管疾患の病型分類

脳血管疾患の病型分類は脳梗塞、脳内出血、くも膜下出血に分けられ、それぞれ頻度は63.9%、24.8%、11.7%の割合です。

図2によると脳内出血が1960年頃より減少し、脳梗塞が増加しています。

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図 2. 脳血管疾患死亡率の年次(昭和26年~平成12年)

注: 「脳血管疾患」は、脳内出血と脳梗塞とその他の脳血管疾患の合計である
「くも膜下出血」は、その他の脳血管疾患の再掲である
資料:厚生省「人口動態統計」

脳梗塞の臨床病型

脳梗塞の臨床病型は詰まる血管の場所と原因により

ラクナ梗塞

 (脳深部の穿通動脈閉塞に基づく小梗塞)

アテローム血栓性梗塞

(主幹脳動脈の粥状硬化性病変に基づく脳梗塞)

心原性脳塞栓

(心由来の栓子による脳動脈閉塞)

の3型に分けられます。

わが国ではラクナ梗塞が多く(25~40%)、アテローム血栓性梗塞は比較的少なく(15~25%)、心原性脳塞栓の頻度は25~30%です。
また、20%前後は、その他の原因か分類不能の脳梗塞です。

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無症候性脳梗塞

最近は脳のMRIやCTで偶然に発見される脳梗塞があります。
・脳卒中の既往なし
・CTやMRIで偶然に発見される
・神経症状や病歴が無い
・80%は脳深部にできるラクナ梗塞
・65歳以上のMRIで28%にみられる
・40歳以下ではみられない
・脳ドックを受けた人の10.6%に存在する
・無い人よりも10倍脳梗塞になりやすい
・加齢、高血圧、糖尿病、高脂血症、喫煙、心房細動、虚血性心疾患が危険因子

脳梗塞の前兆(前ぶれ)と症状

一過性脳虚血発作(TIA:Ttransient Ischemic Attack)「前ぶれ発作」と言います。

脳卒中と同じ症状

・体の片側がしびれる
・感覚が鈍くなる
・眩暈(ふらふらする)
・言語障害(呂律が廻らない)
・巧く喋れない
・片方の眼だけ見えにくくなる
・視野の半分が見えない

数分から十数分~1日で症状が消える

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脳梗塞の進展

脳梗塞は発症後3時間以内に治療しないと病巣がどんどん拡大します。

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脳梗塞の治療

脳梗塞の治療は3時間以内に開始することが重要であり、 血管内カテーテル治療が可能な専門救急病院に救急車 で搬送入院することが必要です。

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障害された組織で発生する活性酸素(フリーラジカル)が脳細胞を壊死させるので、 抗酸化薬エダラボンは脳梗塞のすべてに使用します。

内服薬治療法は抗血栓療法で抗血小板薬と抗凝固薬(ワルファリンなど)の2種類があり、 ラクナ梗塞とアテローム血栓性脳梗塞の場合は抗血小板薬が特に推奨されています。

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脳卒中で倒れた有名人

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脳梗塞の予防

生活習慣病を防ぐことが最も大切ですが、その他に青魚(エイコサペンタエン酸を含む)、 大豆製品(植物性女性ホルモン:イソフラボン)を食べて動脈硬化を防ぐことや、 就眠前・めざめ後のコップ1杯の水分摂取をして血液濃縮をさけることもよいでしょう。

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脳梗塞の危険因子は高血圧、糖尿病、高脂血症が3大リスクファクターとして挙げられ、 その他に喫煙、飲酒、肥満、ストレスがあり3大リスクを早期発見し、 治療が必要な場合は内服薬を服用し対処し、さらに悪い生活習慣を改めることが重要です。

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発症後の注意

発症後は、年に一度は専門医の診察を受けて、頭部CTやMRI検査で新しい脳梗塞が出来ていないかをチェックしましょう。