『マイコプラズマ肺炎』とは

  1. マイコプラズマ・ニューモニエという微生物による感染症です。
  2. 一般に症状が軽いといわれていますが、通常の細菌性肺炎の治療によく用いられる抗生物質 (ペニシリン、セフェムなど)が効きません。

 

症状

  1. 特徴は長引く咳です。
  2. 潜伏期間は通常2~3週間、発熱、頭痛、全身倦怠感などで発症するため、はじめは通常の「かぜ」と見分けがつきにくいです。
  3. その後、3~5日で乾いた咳が出るようになりますが、徐々にひどくなり、熱が下がった後も長く続きます(3~4週間)。
  4. その他の症状としては鼻炎、喉や胸の痛み、下痢、嘔吐、発しんなどがあります。
  5. 症状は比較的軽いといわれていますが、重症肺炎を起こすこともあります。
  6. また、まれに無菌性髄膜炎、脳炎、肝炎、すい炎、溶血性貧血、心筋炎などの合併症を引き起こすことがあります。

 

流行時期・好発年齢

  1. 年間をとおして発症しますが、秋から冬にかけてやや多い傾向にあります。
  2. また、かつては4年周期でオリンピックが開催される年に大きな流行がみられたため、 「オリンピック病」とも呼ばれていましたが、最近はあまり関係がないと言われています。
  3. 年齢別では、幼児期~青年期にかけての患者が多く、乳幼児と高齢者に多い通常の細菌性肺炎とは異なっています。

 

治療方法

  1. 「かぜ」と思っていても、咳が長く続くようであれば、医療機関を受診することをお勧めします。
  2. 抗生物質による治療が基本で、マクロライド系やテトラサイクリン系、ニューキノロン系の薬剤が用いられます。
  3. マイコプラズマは他の細菌と異なり、細胞壁をもっていないので、細胞壁の合成を阻害するペニシリン系やセフェム系の薬剤は効果がありません。
  4. 近年、治療薬であるマクロライド系抗生物質に耐性をもつマイコプラズマ感染症が問題になっています。

 

感染経路

  1. 咳やくしゃみによって、放出されたマイコプラズマを、吸い込むことによって感染します。
  2. インフルエンザと異なり、感染力は比較的弱く、感染するには濃厚な接触が必要と考えられています。

 

予防方法

  1. かぜやインフルエンザの予防と同じく、手洗い、うがい、マスク着用などの励行に心がけましょう。

 

登校登園について

  1. 学校保健安全法では、学校で予防すべき感染症第一~三種に明確には規定されていません。
  2. 登校登園については、せき、発熱などの症状が改善し、全身状態の良いものは登校可能となっており、 流行阻止の目的というよりも、患者本人の状態によって判断すべきであると考えられます。

 

マクロライド耐性マイコプラズマ感染症について

  1. 近年、治療薬であるマクロライド系抗生物質の耐性をもつマイコプラズマ感染症(マクロライド耐性マイコプラズマ)が小児に多く見られます。
  2. マクロライド耐性マイコプラズマが発見されたのは2000年からで、その後、耐性率が増加傾向にあり、この耐性化は全国規模で見られています。
    マクロライド耐性マイコプラズマはマクロライド系抗生物質全般に耐性化しています。
    以前は優れた効果が見られたマクロライド系抗生物質の投与にもかかわらず、その効果が見られない遷延化例や重症化例が増えたのはこのためと考えられています。
  3. 現在、マイコプラズマ感染症と診断され、マクロライド系抗生物質で治療したにもかかわらず、症状が改善せず、 入院加療となった患児には、多くの場合、テトラサイクリン系であるミノマイシンという抗生物質を使用せざるを得ない状況にあります。
    現在ミノマイシンには耐性菌は認められていませんが、必ずしも抗菌力に非常に優れているわけではなく、 ミノマイシンで治療されている入院加療患児の30%の例には他剤の併用が行われているという報告もあります。

    より効果的な新薬の登場が望まれます。